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13・国交正常化構想の三つの誤り 日本向け2部(13/20) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

13・国交正常化構想の三つの誤り
 いずれにせよ以上のような理由で、「日朝の不幸な過去を清算をし、国交正常化を図る」という従来の対北政策には、その原点から重大な錯誤が存在していると私は考える。
 要は「道理がない」ということであり、これが日朝国交正常化に反対する第一の理由である。この「道理があるかないか」は重要だ。なぜなら、ここで後世の審判が別れるからである。あらゆる政治的決断は後世の審判を仰ぐ運命にあり、それは対北政策とて例外ではない。北朝鮮への「過去の清算」なる行為には道理がなく、また誘拐犯が人質をかえせば莫大な援助がもらえるというのも筋の通らない話である。わが国の大物政治家の中には未だに「北朝鮮と国交を回復すれば歴史に名が残る」と考えている度し難い人がいるが、道理のないことをすれば歴史に裁かれ、残るのは悪名だけである。
 第二の反対理由は、「この国は近い将来に崩壊するから国交を樹立するだけ無駄だ」というものである。上記が過去に対する認識に拠るとすれば、これは未来のそれに拠るものだ。
 原因として二つが考えられる。
 ひとつは後継者問題という内部要因である。次男の金正哲(ジョンチョル)が有力視されているが、一方で長男の金正男もすでに党内の実力者であり、経験と実績では後者のほうが上である。また「非世襲」のケースも考えられている。それが軍の実力者による集団指導体制なのか、あるいは三代目による権力の掌握が完成するまでの「繋ぎ」「摂政」なのかは分からない。
 実は、このように見解が別れること自体が危うい証拠なのである。専制国家では権力は専制者一人に集中する。その継承が曖昧である場合、民主国家にいるわれわれの想像が及びもつかないほど指導層に動揺をきたすのである。具体的には、派閥抗争や殺し合いという形となって表面化する。これは専制国家の宿命である。
 仮に後継者が正哲に決まり、正男が自分の地位や生命に何らかの危険を感じた場合、どうなるだろうか。また、正哲のほうが三代目としての地位や権力を正男から脅かされていると感じた場合、どうなるだろうか。あるいは、両者の立場が逆でも構わない。
 こういった、ちょっとした疑心暗鬼で周囲を巻き込んだ殺し合いに発展するのが専制国家なのである。それぞれの下には大勢の部下が付いており、彼らにしても同じように自らの出世と生命に関わる大事なのである。当然、命がけの権力闘争になる。己の身に危険を感じたほうは外国に国さえも売る。なぜなら、専制国家とはそういうものだからだ。
 以上のような予測は、従来言われていた「経済破綻→崩壊」論とは一線を画すものであり、それは従因に過ぎず、主因はあくまで専制者の老いと後継者問題によって専制国家特有の弱点をさらけ出すことにあるとの考えに基づいている。
 もうひとつの原因は外部的なものである。
 北朝鮮が近未来に崩壊すると確信するに足る有力な根拠は、大きくは従来の経験や常識がまったく通用しない人類社会全体の巨大な変化の進行である。この流れを国家権力で堰き止めることができると考えるのはまったくの幻想にすぎない。すでに外界に対してわずかに扉を開けてしまった北朝鮮にもその流れが怒涛のごとく押し寄せている。現在、それが中国や韓国からの経済投資という形で現れ、今後は欧米・ロシアからも相次ぐが、いったんモノと金が北朝鮮国内に流れ込み始めれば、すぐに人と情報も大量に押し寄せることになるだろう。いや、現にそうなりつつあるのだ。
 このような変化は世界的規模で生じているものであり、北朝鮮だけ例外で居続けることは不可能である。一般的には経済のグローバル化や世界市場の創出などと言われているが、名称は何であれ終着点が世界の政治的・経済的な一体化であり、統一であることには変わりない。その変化のスピードが今や「爆発曲線」と呼ばれる急カーブを描きつつある。
 これらの原動力となっているのが資本主義が本質的にもつ本能である。資本主義にとってはいかなる国境も国家の固有性も邪魔者であるらしく、まるでブルドーザーで地面をならすように猛烈な勢いで世界を平坦化し、人・モノ・金・情報が完全に自由に行き交う世界の誕生に向けた不可逆の潮流を生み出している。この流れからすると、北朝鮮のように世界でもっと異質な国家ほど、もっとも大きな抵抗を受けるはずである。よって、いかなる個人であれ国家であれ抗うことができないこの世界的規模の潮流は、近い将来、その存在自体を許さないがごとく現北朝鮮の国家体制を押し流してしまうだろう。
 以上の二つの理由により、北朝鮮の崩壊は予定調和であり、単に時間の問題と私は考える。よって、もはや北朝鮮との国交正常化は意味のないことである。
 おそらく、崩壊と同時にそれまで隠蔽されてきたありとあらゆる闇が暴かれることになるだろう。政治犯収容所などはかつてのナチのそれと対比されるに違いない。悪逆非道な独裁国家に手を貸した者は、歴史の法廷に立たされる。したがって、「不幸な過去を清算し、日朝の国交正常化を果たす」という“信念”に燃えた一部の政治家や官僚は、たとえ彼らの信じる歴史的使命とやらを成し遂げても、結果として二階に上がって梯子を外されるような格好になるだろう。まことに気の毒なことに歴史書には「勘違いの愚か者がいた」と冷笑をもって記録されるので、たしかに彼らが「歴史に名を残す」のは間違いない。
 日朝国交正常化に反対する第三の理由は、仮に拉致問題の全容が明らかになれば国民が激昂するので、現実に国交の樹立はありえないというものである。むろん、与党が政権の座から滑り落ちることを覚悟するのであれば、話は別だが。
 北朝鮮に今も囚われている日本人は、実際には政府認定の残る12名だけで済むはずがない。真実には百名以上であり、しかも生存率は極めて厳しいものかもしれない。TBSの「報道特集」によると、なんと政治犯として強制労働させられている日本人も目撃されているという。よって真相が究明された時、国民は「9・17」以上に激昂する。その世論の反応を考えれば、北朝鮮との国交樹立や経済援助など言語道断だろう。
 仮にそれがありうるとすれば、金正日政権がクーデターによって倒壊し、新政権が反金王朝・親日政策を掲げた時のみである。日朝の国交樹立とその後の経済援助策が叶うことがあるとすれば、これが唯一の可能性である。
 以上の三つの理由により、「日朝は一刻も早く国交を樹立して関係を正常化すべきだ」などという考えを私は否定する。このような発想は、過去も知らなけば未来に対する想像力もないために生じたものである。わが国は北朝鮮に対していかなる負債も背負っていない。過去を清算する義務もなければ、国交を樹立しなければならない理由もない。経済援助するにしても、少なくとも相手が親日的な新政権にならない限り、正当性がない。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

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