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北朝鮮による日本人拉致問題の解決策 ブログトップ
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この世は“情報世界”であり“仮想現実” [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

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1・拉致問題の解決策である「山田案」とは何か? 日本向け1部(1/10) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

はじめに
 そもそも、われわれはなぜ北朝鮮による日本人拉致問題を解決しなければならないのだろうか。
 答えは簡単である。それは同問題が国家の根幹と存在意義に関わるからだ。
 国家の第一の義務は安全保障である。つまり、国土を守り、国民を保護することだ。個人の自由をはじめとするあらゆる市民的権利や社会の平和、経済的繁栄なども、しょせんはこの安全保障の枠内で達成されるものでしかない。逆に言えば、安全保障が崩壊すればすべてが崩壊するのであり、ゆえに欧米ではそれをハイポリティクスと位置づける。
 拉致問題は、北朝鮮の工作機関が白昼堂々、大勢の日本人を拉致したことによって生じた。これは日本国民の生命と人権を脅かした侵略行為に他ならない。本来ならば、その時点でわが国に対する宣戦布告に値する。事実、一昔前なら開戦事由になっただろう。
 だが、対策本部の設置になんと30年もの歳月を要した。その過程では、「拉致は公安の捏造」と言い張る者や、「拉致事件の捜査を止めろ」と警視庁に怒鳴り込んだ社民党の旧党首のような者もいた。驚くべきことに、政治家と官僚の中にも、拉致被害者の存在を「日朝国交正常化の障害」などと邪険に扱う者までいた。
 本来、被害者であるはずの人間が、加害側――しかもあらゆる悪事を行ってきた非人道的な独裁国家――と戦うどころか、逆におもねり、ご機嫌をうかがい、友好関係を取り持つことがさも歴史的使命であるかのごとき自己陶酔していたのである。このような関係を他人と結ぶ人間のことを世間の常識では「奴隷」と呼ぶ。国家が平然と悪に屈する…あってはならないことである。アメリカに安全保障をゆだね続けた結果、日本人の国防と自衛に対する感覚、あるいは国家観そのものがここまで麻痺しきっていたのだ。
 もっとも非難されてしかるべきは、明らかに自国民を見殺しにしかけていた一部の政治家ではないだろうか。仮に拉致被害者を切り捨てて北朝鮮と国交を樹立した時点で、国家はその存在意味を失うだろう。国民が国旗を掲揚する意味も、命を賭けて国を守る意味も、日本という国や同胞を愛する意味も、そのすべてが失われてしまうのだ。そういう意味において、02年の「9・17」以降、われわれが「何のための国家か」という問いかけを改めて余儀なくされたのも無理はない。
 ある元外交官は、拉致問題を放置すれば「国体が崩壊する」と喝破した。事実、このようなかつての対応は、明らかに国民にとっての国家の存在価値を失わしめる危険性を孕んでいたと言わざるをえない。なぜなら、国家とは共同幻想の産物だからだ。国家の正統性、紙幣の発行権、警察と軍隊の権威…そういった“あるテリトリー内における唯一の正当な権威・力”としての国家権力も、突き詰めていけばその構成員たる国民の幻想によって支えられているにすぎない。もし日本国民に害をなす外国に対して日本政府が毅然として対峙しなければ、国民は次第にその幻想を共有しなくなるだろう。その結果としてもたらされるケイオス状況を、フランスの社会学者は「アノミー」と称した。
 その拠って立つ礎を失った時、国家が内部から崩壊を始めることは実証されている。その行き着く先は秩序の崩壊であり、結果としての無数の暴力の乱立である。国家内国家としての宗教勢力や民兵が跋扈し内戦に突入する、あるいは、求心力を失った国家に代わって新たに地方やエスニック性が求心力となり分離独立が進むといった事例は、歴史の中にも、いや、現代においてさえたくさん見出すことができる。「日本は絶対にそうならない」と信ずるのは勝手だが、それが客観性の欠けた単なる思い込みでしかないことは、終戦直後の無秩序状態や「労働者に祖国はない」という国家否定のインターナショナリズムの異常な蔓延を見ても明らかである。
 国家は意外なほど脆い。国民の信を失った国家はやがて自ら滅ぶ。そう考えると、拉致問題を蔑ろにすることは国家の自殺行為に他ならないことが分かる。だから、私は次のように言い切る。北朝鮮による日本人拉致問題は“戦後最大級の国難”である、と。
 幸いと評してよいのか、多くの日本人は拉致被害者の皆さんの犠牲によって眠っていた生存本能を呼び覚ますことができた。国民は「9・17」で憤激し、結果として目覚めることができた。これは天のご加護である。
 現在、日朝間は弾こそ飛ばないが事実上の戦争状態にある。そして戦争である以上、われわれは勝たねばならない。国家の難局を乗り切るのに、ましてや戦争に官も民もあるだろうか。本提案者は一民間人であるが、そういった志において拉致問題の解決に協力するのが当然と考え、数年にわたって策を練り続け、この文書をしたためた。
 本稿は結論部分としての1部と、その詳細な補完部分である2部より成る。拉致問題の解決にたずさわる人々に少しでもインスピレーションをもたらすことができれば、筆者として本望である。

1・拉致問題の解決策である「山田案」とは何か?
 山田案とは、2002年9月の日朝首脳会談から数ヵ月後の03年1月以降、山田高明が拉致問題に関係する政府の各組織や要人に対して、文書の配布や個人的な手紙の郵送などを通して提唱し続けている同問題の解決策のことである。
 その具体的な内容とは、中国の胡錦濤政権に対して以下の提案を行うというものである。
「もし貴国が北朝鮮に囚われている日本人拉致被害者とその家族の生存者全員を取り戻してくれるならば、日本はODA3兆円の債権を戦争賠償という形で放棄――新日中条約の締結――してもよい」
 この提案の背景には「中国こそが拉致問題を解決できる唯一の国である」との認識があり、そのことは詳しい理由も含め後述する。また今回は、金正日政権をクーデターによって一気に処断する非常策も考えた。これは5項で説明するが、秘匿を願いたい。
 この山田案に対し荒唐無稽で常識外れという印象をお持ちになる方もいるかもしれない。だが、この提案は他のどんな策よりも、中国を全力で拉致問題の解決へと駆り立てる動機付けとなるだろう。現在、中国は本音では拉致問題に何の同情も関心もない。その中国を動かすには思い切った見返りが必要である。その結果、わが国は「日朝戦争」において頼りがいのある「臨時同盟国」を得ることができる。そして中国は現実に解決能力を有している。今やあらゆる状況が解決の成功を保障していることは後述する。
 むろん、わが国は大きな代償を支払うのだから、日本人拉致問題の解決以外にも交換条件として、たとえば「日本の国連安保理常任理事国入りを支持すること」といった条件も提示するなど、可能な限り国益の利幅を大きくすべきなのは言うまでもない。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

2・山田案は「国家百年の計」からスピンオフした解決策である 日本向け1部(2/10) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

2・山田案は「国家百年の計」からスピンオフした解決策である
 この策が他のすべての解決案と根本的に異なっているのは、まず初めに「国家百年の計」があって、そこから拉致問題の解決に特化する形でスピンオフした策だという点である。つまり、高いレベルの国家戦略の方向性に沿っているということである。
 後述するが、根底には近未来の予測がある。それを踏まえると、日本の将来は「中国をいかにハンドルするか」にかかっていることが分かるはずだ。
 日中が争い続ければ共に衰退する未来が待つだけだが、幸い国内外の事情から昨年より胡錦濤政権が急速に対日接近を始めた。だが、派閥対立の構図が胡政権二期目の新陣容にも受け継がれており、何かのきっかけで、またしても指桑罵槐の手段としての反日が使嗾される可能性は捨てきれない。それが権力闘争の戦術として通用するのも、元はと言えば焚きつけ可能な反日感情が民衆レベルで内在しているからである。
 そういう意味で、一番の問題は双方の市民感情であり、とりわけ中国人民の対日感情である。彼らの「愛国的反日民意」は、元は政治的に作られたものであるが、今では共産党自身にもその怪物がコントロール不能になりはじめ、民心に迎合しなければ政権の基盤を揺るがしかねない水域にまできている。中国のバブル経済が崩壊すれば、このような民意を背景として中国がどこへ向かうか分からないし、近未来に日中が軍事衝突するというシナリオも決して絵空事ではない。よって、私は現段階で中国人民の対日復讐心の原因を究明して取り除くことが日本の安保上の国益にかなうと考えており、同時にそれが来るべき世界多極化時代に向けた備えにもなると思っている。
 われわれはどこで何を間違えたのだろうか。私の考えは、ひとつには「日中は72年の日中共同声明で最初のボタンの掛け違えをしてしまった」というものである。つまり、戦後の日中関係はその出発点から間違ったのである。具体的には、第5項の「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」という、例の賠償請求放棄条項である。
 現在、日本の最高裁はこの第5項をもって「中国は民間人の請求権も放棄した」と判断し、中国が是とする民間人の戦争被害者による賠償請求訴訟まで棄却している。中国人民としてはとうてい納得のいくものではないだろう。ただし、詳しくは2部で述べるが、この判決は法理的には正しいのである。だからこそ余計に厄介なのだ。
 そこで私の考えは、いっそうのこと過去の日中共同声明を「時代に合わなくなった」として「発展解消」し、「21世紀の新日中条約」を創案して両国の間で締結してはどうか、というものである。むろん、新条約の主な改善点は、過ちの根源である問題の第5項を無くし、「日本はODA3兆円の債権放棄をもって中国および中国人民に対して過去の戦争賠償を実施するものとする」という趣旨の新たな条項を追加することである。そしてこの新日中条約の締結が、中国の介入による拉致問題の解決と交換条件なのである。
 このような試みを常識外れであるとか、冒険的すぎると忌避する人もいるかもしれない。だが、個人補償を明記した新条約を締結してこそ中国人民も真に納得することができ、また日本人も自身を道徳的に救うことができるのである。むろん、国際社会からも「日本が道徳的勇気を発揮した」として賞賛されることは間違いない。そしてそのような国際社会における道徳的立場の強化という成果が、続く国連安保理の常任理事国に加入する際にも日本に有利に働くことは言うまでもないだろう。
 以上を実現するにあたり、一番の障壁はわれわれ自身の固定観念であり、性格的な欠点ではないか。日本人は過去の概念や約束事に縛られるあまり、手段そのものを目的化してしまう傾向がある。だが、そもそも日中二国間の条約は、「日中友好」という目的を達成するための手段でしかない。よって、それが目的をうまく果たせないならば、変えてしまえばいいのである。われわれは、本来の目的を達成する手段として考え出されたに過ぎない型を壊すことを極度に恐れ、時代ごとに変化する現実に対する柔軟性を失いがちだ。しかし、そもそも国家間の条約が不変であったことは一度もないし、不変でなければならない必要もない。一方の国が二国間条約を一方的に破棄すれば国際法違反であるが、双方が合意して「終了」させる分には、日英同盟の例のごとく何ら問題ではないはずだ。
 私個人は、以上を「国家百年の計」の観点から日本国は実行すべきであると、常々考えてきた。そしてこれを取引材料とすることで、中国に対して拉致問題の解決を交換条件として持ちかけることができると考えた。このようにハイレベルの国家戦略から派生した解決策であるという点が、山田案が他のそれとは根本的に異なっている点である。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

3・山田案には道理と戦略的利益がある 日本向け1部(3/10) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

3・山田案には道理と戦略的利益がある
 この「ODAを戦争賠償に代える」という発想は、決してアクロバティックな思いつきではない。なぜなら、もともと外務省のODAは、名目上は中国の経済建設協力のためのソフトローン(低利融資)が大半であるが、実態としては中国に対する戦争賠償としての性格も帯びており、事実、中国側はそう受け取ってきたからである。よって、その内実にふさわしく、新たに日中条約を締結し、本当に戦争賠償としてそれを帳消しにすることは、むしろ「合理的」ですらあり、大いに「道理・筋」があると言えるのだ。
 重要なのはこの「道理・筋」があるという点である。ここがしっかりとしていれば歴史の審判にも耐えることができるし、また、拉致問題の解決を急ぐあまり捻り出した奇策であるとの印象批判も決然と跳ね返すことができるのだ。
 この策の優れた点は、それ以外にも様々な戦略的利益があるという点である。
 たとえば、中国がここ十数年にわたって仕掛けてきた歴史問題での対日謀略を打ち破ることもできる。先ごろ、米民主党のマイク・ホンダ議員が推進役となって米下院で従軍慰安婦問題に関する対日批判決議が採択された。安倍前総理は面子を潰され、わが国は大いに恥をかかされたが、議員たちの背後にいたのは「世界抗日戦争史実維護連合会」などの北米在住の中国系反日組織であると言われている。だが、北米をはじめ世界各地で活動している反日市民運動の策源地は北京なのである。おそらく共産党の党中央政治局員の中の誰かが主謀者ではないか。もしわが国が「山田案」を実行し、「21世紀の新日中条約」を締結すれば、その策源地を直撃する形になり、以降、民間中国系の有象無象による反日情報戦に振り回されることもなくなるだろう。案外、締結交渉時に「あの連中の反日活動を止めさせてくれ」と胡錦濤氏に要求すれば、あっさりと通るのではないか。
 また、この「山田案」は安全保障政策ともなりうる。なぜなら、中国の対日人民感情を大きく慰撫する効果が期待できるからだ。中長期的にみれば、これが一番の国益かもしれない。かつてわが国は「暴支膺懲」(暴虐な支那を討伐し、懲らしめる)の大衆世論を背景として大陸での戦争に突入した経緯があるが、今では中国の側に「暴日膺懲」とでも表すべき人民感情が形成されてしまった感がある。この民心こそが最大の危険要素である。
 周知のとおり、その原因は第二次天安門事件後に高まっていた人民の怒りや不満の矛先を日本に向けさせ、共産党に対する信頼と求心力を高める手段として、江沢民が公教育とマスメディアを動員して積極的に推進した「日本悪魔化」政策にある。党中央の対日姿勢転換を敏感に嗅ぎ取った知識層も大挙してそれに加担したこともあり、対日偏見が異常なほど拡大生産された。結果として中国人は、「過去の戦争をまったく反省していない日本人は未だに軍国主義的な野望を捨て切れず、祖国統一を妨害して中国を封じ込めようとしている」といった憎悪と偏見を妄信するようになった。
 05年3月、日本の国連安保理常任理事国入りに反対するデモが中国各都市で燎原の火のごとく広まり、日本の大使館や領事館、商店などが襲撃を受けたことは記憶に新しい。胡錦濤政権に面当てするために上海閥がデモを使嗾したとも噂されているが、いずれにせよ、当局によって操作されていたとはいえ大衆感情抜きには説明できない現象でもあった。デモの主力である「憤青」たちが反対の根拠とした中には、「日本は戦争被害国への謝罪と賠償を拒否している」「日本は歴史教科書を改ざんし、侵略の歴史を教えていない」といった、事実に基づかない典型的ともいえる対日偏見や先入観があり、彼らがいかに政治的な洗脳を受けてきたかが分かる。この種の“愛国”人民は今や至るところで対日マスヒステリーを暴発させている。スポーツの国際大会では、遠征してきた日本選手に対して罵倒し、物を投げつけ、日本国歌にブーイングする等の異常な反日行動が日常風景になっている。今ではこれが中国人の対日感情の典型なのである。
 恐るべきは「中華ナチズム世代」の台頭だ。彼らは「遅れてきたナチ」そのもので、「中華民族の利益を実現するためなら他の民族をいくら犠牲にしても正当化される」と本当に悪びれることもなく信じきっている。文化大革命の時に暴れまわった無知で凶暴な青少年とそっくりであるが、問題はその矛先が日米に向いていることである。彼らは悪しき教育により、「われわれ中国人は西洋と日本から酷いに合わされた、しかも相手は謝罪も反省もしてない、だからやり返す権利がある」と信じ込まされ、復讐心を植えつけられている。しかも、一般の市民や社会全体が彼らに好意的だ。比較的冷静な知識層でさえ、「日米は中国の生存競争における邪魔者であり、いつか排除しなければならない」と考える者が増加している。こういったことはすべて戦争の一種の兆候である。将来、何かのきっかけで、この潜在意識下の殺意とも評せる攻撃的なナショナリズムが爆発する可能性がある。
 困ったことに、今や独裁政権のはずの共産党が民衆から「親日」を理由にして攻撃されるケースも目立ち始め、この「集団の空気」に容易に逆らえなくなっている。人民の敵である日本を擁護することは売国・漢奸に当たるというわけだ。皮肉なことに、かつて共産党が民衆の間に炊きつけた反日憎悪という怪物が当事者にもコントロール不能になり、その民心に対する迎合と妥協を余儀なくされる状況に陥っているのだ。
 だが、もし日本が中国に対して戦争賠償を実行すればどうなるだろうか。これは何よりも中国人民に対する直接アピールとなるだろう。彼らが対日攻撃の正当性として挙げているのは「中国を侵略しながら日本が謝罪も反省もしていないこと」であるから、その根拠を消滅させることができる。このような対日戦意を削ぐ効果は「戦う前に勝つ」ことを意味し、心理戦での勝利に値する。胡錦濤政権としても日本からそれを勝ち取ったことを自らの功績として大々的に喧伝するであろう。これは同時に、「日本は過去を清算した」という大規模な広報ともなり、人民の「暴日膺懲」感情を大きく慰撫する効果がある。共産党としても、こうして「親日」が政敵からも人民からも足を引っ張られる材料でなくなれば、以降、正々堂々「親日」政策を掲げることもできるだろう。
 わが国は山田案を実行するにあたり、以上のことを条件として中国側に提示することも可能なはずだ。そしてODAの債権放棄を「毎年5千億円ずつ進め、中国側が約束を遵守しない場合は停止することもできる」と定めれば、胡錦濤政権の第二期に「親日」の縛りをかけることも決して不可能ではない。
 このように、「国家百年の計」や安全保障の観点から戦略を俯瞰するなら、果たして山田案を一概に荒唐無稽として排除することが適切だろうか。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

4・なぜ中国ならば拉致問題を解決することができるのか? 日本向け1部(4/10) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

4・なぜ中国ならば拉致問題を解決することができるのか?
 中国が本気で拉致問題の解決に乗り出すうえで、山田案が十分な動機となることは疑うべくもない。なぜなら、胡錦濤政権の得る実利があまりに巨大だからだ。3兆円のODAの無償化という単なる経済的な利益だけでなく、指導者個人のカリスマ性を高揚し、国内の権力基盤を磐石のものにできるという意味においても政治的な利益は計り知れない。指導者は誰でも歴史的な名声を欲するものであり、胡氏とて例外ではない。
 よって、山田案の提示を受けた中国は、必ず解決に向かって動き始める。だが、問題は中国が現実にその解決能力を有しているか否かということである。それがなければ山田案も単なる空理空論にすぎない。
 私の考えは、以下の理由で、中国が本気を出せば拉致された日本人たちを必ず北朝鮮から救出することができるというものである。
 第一に、「中国は北朝鮮の生殺与奪の権限を握っている」という現実である。
 中国は北朝鮮に対して莫大な燃料や食糧を援助し続けている。その額は毎年、約2千億円に達するという。また、中朝国境は今や北朝鮮にとって外貨を得るための貿易や生活必需物資の流通のための「生命線」となっている。
 要するに、現実に北朝鮮は中国に依存しなければ生きていくことができないのである。仮に中国が国境を封鎖すれば、北朝鮮はそれだけで経済破綻を起こし、金正日体制も崩壊してしまうだろう。これについては詳しく論じるまでもない。
 第二に、拉致問題がもはや金正日個人の面子の問題になっているという現実である。これに関しては、私個人のオリジナルな見方なので詳述したい。
 もともと彼にとって、日本人を拉致した事実を認め、謝罪しただけでも、その面子が潰れかねない問題性を孕んでいたに違いない。だが、「自らの体制維持のためには日本からの経済援助が欠かせない」と考えた金正日は、ぐっと我慢して、罪を認めた。
 だが、その結果、金正日の得たものは日本からのしっぺ返しだった。彼がどれだけ激怒したか、想像に難くない。彼には北朝鮮の「国王」としての国内向けの「顔」というものがあり、また、部下たちに対する首領としての「面子」がある。それを平然と潰されたので、彼は日本に対して今も深い恨みを抱いている。
 日本政府も日本人も、北朝鮮が金正日個人の意志で動く専制国家であるという事実を忘れがちである。その専制者の立場にたってみれば、「すべての日本人拉致被害者の存在を認め、彼らを日本に帰国させ、謝罪する」などという行為は、彼個人の面子に賭けても決してできないことが分かる。つまり、「日本に屈する」ことだけは死んでもできないのだ。だから、金正日は残る拉致被害者の存在を絶対に認めないし、絶対に謝罪しない。
 このように、「もはや引くに引けない」というのが、今の金正日の立場なのである。
 だが、その彼を説得できる人物がこの地球上にただ一人だけ存在している。それが中国の胡錦濤国家主席なのである。
 中国は北朝鮮から見て事実上の宗主国にあたる。戦後に建国された北朝鮮には「朝鮮戦争」という原体験がある。連合軍の反攻で鴨緑江にまで追い詰められた北朝鮮は、一度、地図上から消滅した。それを救ったのが「義勇軍」という名の精鋭部隊を送り込んだ中国である。この時以降、朝鮮戦争は「米中戦争」と化し、その中国の犠牲によって北朝鮮という国家は息を吹き返した。このような歴史的事実は朝鮮人の対中国心理を形成する上で決定的に重要な意味を持っている。あるいは仮に北朝鮮指導部が忘恩したとしても、中国側が決して忘れることはなく、宗主国としての自らの権利を放棄することはない。
 よって、中国の最高指導者が日朝の間に割って入り、手土産をもって金正日を説得する形ならば、彼としても部下の手前「顔が立つ」のだ。金正日は、「日本の頼みならば絶対にきくことはできないが、中国のたっての頼みとあらば断ることはできない」という風に、国内をうまく説得することができるだろう。くり返すが、北朝鮮という国は金正日個人の意志がすべてに優先する専制国家であり、一般国家の常識を当てはめてはならない。
 ゆえに、以上の第一・第二の条件を考慮すると、まさに胡錦濤国家主席こそが日本人拉致問題を解決できる唯一の「キーマン」であることは明白なのだ。
 おそらく、中国は「飴とムチ」の両方を使うだろう。北朝鮮に対して、「もし拉致した日本人の生存者をすべて北京に送れば、中国が莫大な経済援助をしようではないか」と提案する。一方で、「その頼みを断れば、食糧やエネルギーの支援を停止し、中朝国境も封鎖する可能性がある」と恫喝する。さらに必要とあらば、瀋陽軍区の第16集団軍、第39・40集団軍を中朝国境へ動かし、軍事侵攻の構えをアピールして強力に威嚇するだろう。
 以上の結果として、北朝鮮の金正日は、胡錦濤氏の「たっての頼み」を絶対に断ることができないのだ。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

5・中国側と「悪魔の取引」を交わすことも一つの有効な手立てだ 日本向け1部(5/10) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

5・中国側と「悪魔の取引」を交わすことも一つの有効な手立てだ
 むろん、未来に関しては何事も「ネバー・セイ・ネバー」であるから、中国が「飴とムチ」を使い分けて日本人の返還を強く要求したところで、北朝鮮が頑固に拒み通してみせる可能性もある。体制維持のための核ミサイルが「外国の脅威」であるアメリカに向くならば、同じ理由で中国に向いたところで不思議ではない。
 だが、その場合、中国は金正日政権を切り捨てる決意を固めるだろう。つまり、クーデターの使嗾である。上記を「通常策」とするなら、これは「非常策」である。
 中国にはこのような作戦を立て、実行する能力がある。中国の諜報機関は北朝鮮に深く浸透していると言われ、これまでも金正日が幾度が潰しに動いたという。おそらく、中国の後ろ盾があれば安心して政権打倒に動くことができると考える将軍は何人もいるはずだ。結果、金正日は殺害され、傀儡である親中政権にとって代わられる。これにより、日本側の拉致被害者救出真相調査団も堂々、現地入りできるだろう。
 何よりも重要なことは、第一にこのクーデターが成功する理由があること、第二にこのクーデター使嗾案を承諾するに足る事情が今の中国にあるということだ。
 具体的には2部で後述するが、第一は金正日の老いと後継者問題に関係する。第二は、中国にとってのキューバ危機――裏庭の国から咽元にナイフを突きつけられた状態――の進行である。この事態が彼らに金正日政権の打倒を決意させる主因になるだろう。米朝急接近と裏腹なのが中朝関係の急激な悪化である。極東情勢は数年前の常識が通用しないほどガラリと変化した。このことは2部で取り上げる。
 よって、最初に通常策で臨み、それが失敗した場合、次策として「金正日政権の打倒」という非常策に切り替えればよい。
 日本側からもそのように念を押しておくべきである。つまり、中国側に対して以下のように提案するのだ。
「仮に『日本人拉致被害者とその家族の生存者全員を返還せよ』という貴国からの要求に対して北朝鮮が応じなかった場合、金正日政権をクーデターで打倒するのも一つの手です。結果として拉致問題が解決するのであれば手段は問いませんし、その見返りとしてわが国は新日中条約の締結という形でODA3兆円の債権を戦争賠償として放棄しましょう」
 まさに「悪魔の取引」である。本提案を極秘とすべき理由もまさにこのアイデアを含むからだ。北朝鮮の諜報網は日本の要所に深く浸透している。政界はもとより、内調・警察公安部・公安庁といった情報機関にも内通者がいるという証言がある。ゆえにこのアイデアは限られた関係者以外には漏らさないことが重要である。
 むろん、これは完全な謀略であるが、「戦争」である以上、タブーの烙印を押すべきではない。戦争は大将の首を取れば勝ちである。相手が独裁国家ならば、なおさらだ。どの道こんなアブノーマルな体制は長続きしない。よって一切の遠慮はいらない。
 最近、北朝鮮の崔守憲(チェ・スホン)外務次官が、国連総会での演説後に新華社通信などの取材メディアに対して、拉致事件を「架空の誘拐事件」などと称して日本を非難している(07年10月03日)。また、先の南北首脳会談で訪朝に同行した韓国の文正仁(ムン・ジョンイン)延世大教授によると、金正日がノ・ムヒョン大統領に対して「日本人拉致被害者はもういない」などと発言したという(07年10月09日)。これは拉致問題に対して最後通牒を突きつけたと見なすこともできる。仏の顔も三度までと言われるが、わが国はこのようなゴロツキ国家に対して無制限の忍耐を発揮すべきではない。
 すでに日朝平壌宣言から5年がすぎ、あまりに解決に時間がかかりすぎている。ゆえに最近では、私もこのクーデター使嗾策に傾きつつある。これは「金正日政権が崩壊しない限り、拉致問題が根本から解決するはずがない」と考える悲観派にとっては有望な策と映るかもしれない。山田案で中国を焚きつけ、ここで一気に金正日体制を処断するのも検討に値するオプションである。北京オリンピックなどの中国の国内事情から、実行の時期は08年9月以降がよいだろう。
 仮に、クーデターも失敗し、以上のすべてがうまく運ばなくとも、結果としてわれわれは「中朝関係を極度に悪化させる」という成果を残すことができる。そういう意味において山田案は「三段構え」の策略である。おそらく、中国との対立が先鋭化すれば、北朝鮮は完全に宗主国を入れ替える決断をする。つまり、アメリカ軍を引き入れようとするだろう。これは何ら驚くべきことではなく、伝統的に朝鮮民族はこの種の芸当を何度もやってのけている。その結果、中朝関係はますます緊張し、中朝戦争も絵空事ではなくなる。
 こうして日米同盟側に完全に寝返る以上、北朝鮮は日本との関係改善にも必然的に意欲を燃やさざるをえなくなる。「昨日の常識は今日の非常識」が国際情勢である。
 いずれにせよ、中国が本腰を入れた時点で、拉致問題の解決は約束されたも同じであると私は考える。それが交渉による返還か、クーデターの使嗾による体制打倒かは、分からないが。われわれは中国側を信頼し、大船に乗った気でいればよい。そして仮にその試みが失敗に帰しても、わが国にとって決して悪い結果には転ばない。
 なにも、「日朝二国間の問題だから、日朝間で解決すべきだ」という固定観念に縛られる必要はないのだ。これは「戦争」である。戦争においては、できる限り同盟国を利用するものだ。そして「勝利」とは「戦争目的」を達成することである。今次「日朝戦争」におけるわが国の戦争目的とは、拉致された生存者とその家族の全員を救出することだ。
 むろん、手段は選ぶ必要がある。リスクの高い「軍事オプション」や「実質身代金支払い」といった方法は、国家として避けねばならない。要は選べる手段の範囲内で戦争目的が達成できれば、それでよいのである。問題は戦争指導者の胆力である。
 戦争とは刻々と変化する生きものであるから、最高司令官(総理大臣)に戦略的なインテリジェンスが求められる。優れた戦争指導ができるか否かは、指導者の資質にかかっており、それが無ければ第二次大戦時のように無残な敗北を喫するだけだ。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

6・中国が対日急接近を始めた背景 日本向け1部(6/10) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

6・中国が対日急接近を始めた背景
 小泉首相の時代、日中関係は国交樹立後最悪と称されたが、06年9月から急速に改善へと向かった。05年3月の反日デモとそれに対する当局の対応、また日本に対する外交姿勢に見られるように、一時あれほど反日に狂奔していた国家が「戦略的互恵関係」なるものを提唱し、今では気持ち悪いくらいにわが国に擦り寄りはじめた。
 このような変化は、いかなる事情によってもたらされたのだろうか。
 ひとつにはアメリカの対中姿勢の変化であり、中国の対日融和政策への転換もその玉突きの結果としてもたらされたと考えられる。
 06年3月、ペンタゴンは新たなQDR(向こう4年間の国防計画)を発表し、中国がアメリカを攻撃する能力を持ったことを脅威ととらえ、対抗策を講じるべきだとした。中国の軍事力増強が毎年二桁を維持し、イランやベネズエラ、キューバなどの反米国家へ接近していることもアメリカを警戒させる要因となっている。
 さらにその翌月にワシントンで行われた米中首脳会談では、胡錦濤国家主席が信じがたいほど屈辱的な扱いを受けた。中国側の再三の要請にもかかわらず、アメリカ側は公式晩餐会で胡主席をもてなさなかった。胡主席の演説中には、記者団に紛れ込んでいた法輪功の信者がずっと喚き散らし、それが中国を除く全世界に実況放送された。胡主席は大中国の指導者としてふさわしい扱いを受けられず、完全に全世界の前で「面子を潰された」のである。少なくとも中国指導部はそう受け取り、内心で非常に憤ったはずである。
 中国としては、この米中首脳会談でかつての米ソのような「世界を二分する超大国の関係」を世界に印象付けたかったが、完全にその出鼻をくじかれた格好になった。アメリカは中国をイコール・パートナーとは見なさなかったのである。中国がアメリカの出方を読み違えた原因は、クリントン・江沢民時代の米中関係を引きずっていたからだ。当時から中国は「米中二大巨頭体制」が到来したものと錯覚し、アメリカの下僕にすぎない日本などはいくら侮蔑しても構わないとタカをくくっていたフシがある。それが05年の愚かしい反日デモと中国当局によるそのフォローにも表れていた。だが、アメリカは世界における「唯一の覇権国」たることを基本戦略としている国である。中国を対等の地位に登らせる気などさらさらない。とくにエネルギー資源の争奪戦が両国の間で始まっており、このことがアメリカをして中国をライバル視する主因になっている。
 アメリカの保守派の学者として有名なミアシャイマー博士の「オフェンシブ・リアリズム」によると、南北アメリカ大陸における「地域覇権国」であるアメリカは、他の地域での覇権国の出現を常に阻止しようという性向を持つという。それゆえ「他の地域に覇権国が出現することを防止する」ことが必然的に基本戦略となる。これは「アジアで日本が強大になれば中国を支援し、逆に中国が強大になれば日本を支援する」というアメリカの対東アジア外交の歴史を見ても、真実であることは明白だ。
 おそらく、訪米で面子を潰された胡錦濤氏は、改めてアメリカこそが中国の宿命の敵であるとの認識を余儀なくされたと思われる。そして自分たちが夜郎国的な錯覚をしていただけでなく、日米両国を完全に敵に回した現状に対しても「しまった」と後悔したはずである。中国の侮日外交は完全にカウンターと化して、日本人を日米同盟強化へと追いやった。日米だけで世界経済の4割を占める。今やこの同盟関係にインドとオーストラリアも合流しつつある。しかも、日本人の中台関係に対する見方はシーソーの原理に近いため、中国に対する敵意が高まった分、台湾に対する同情が強まった。つまり、中国は自ら「両岸統一」の障壁をも高くしたのである。世界の半分をあっという間に仮想敵に回しつつある中国は、自らの失策を悟り、世界戦略を根本から見直す必要に迫られた。
 日本人は日米同盟の対抗軸として無意識のうちに日中関係を意識するが、実は中国人も同じなのである。アメリカとの関係が悪化すれば、彼らも無意識のうちに「同じ東アジア人としての連帯」を意識する。つまり、自然と日本に対して友好的になる。よって「戦略的互恵関係」なるものには、「日本篭絡」と「日米分断の計」の意図も含まれている。彼らは将来予定している台湾併合のためにもこれを欠かせない作業と考えているはずだ。
 むろん、このような国際環境の変化だけでなく、対日接近のより大きな要因として考えられるのが中国の国内事情の変化である。
 象徴的だったのが06年9月の上海市党委書記の解任劇だ。これは水面下で続いていた胡錦濤閥と上海閥との政治闘争の一応の決着を示している。軍権(中央軍事委員会主席)を掌握してからもなお上海閥からの抵抗を受けていた胡錦濤政権が、ついに名実共に真のガバナーとしての権威を確立したことを中国内外へ示す絶好のデモンストレーションであった。周知のとおり、上海閥を率いてきた江沢民こそが反日政策の中心人物であり、彼が力を持つ間、胡錦濤氏は簡単に反日政策を緩和することができないと観測されてきた。実際、胡氏の先輩である胡耀邦元総書記が政敵から「親日派=売国的」として指弾され、失脚させられた実例も過去にある。05年3月の反日デモも、上海閥が胡氏に国際的恥をかかせるべく使嗾したとの見方もある。元来、胡氏は胡耀邦の政治DNAを引き継いでいるので決して「反日」ではないはずだが、上海閥が力を持っている間は揚げ足を取られないためにも反日であり続けねばならなかった。日本に対して友好をアピールできるようになったことは、以前ほど江沢民に気兼ねする必要がなくなったことを意味する。
 ただし、07年1月には人工衛星をミサイルで撃墜する実験が軍部によって強行されており、これもまた国際社会の前で胡氏に面子を失わせるのが目的とすれば、権力の掌握に何らかの不完全さがあるとも見て取れ、引き続き注視の必要性がある。おそらく党大会を機に軍部のトップの首を挿げ替えればいいというレベルでは済まない話のはずである。
 また、その第17回共産党大会が選出した政治局常務委員の新陣容を見る限り、胡錦濤主席が依然として微妙なバランスの上に立っていることが察せられる。まず上海閥が4名もいる。呉邦国・賈慶林・李長春の3名は江沢民の腹心であり、新メンバーである上海市党委書記の習近平は上海閥の若手ホープであるという。しかも胡氏に寝返った曾慶紅は引退を強いられた。胡錦濤閥側も自らの後継者として共青団出身の若手ホープである李克強を常務委員会に入れたが、近い将来には習近平との激しい権力闘争が予想される。これらの新陣容は明らかに妥協の産物であり、上海閥の影響が今なお完全に払拭されていないという観測の正しさを証明するものである。
 上海閥との権力闘争に関しては興味深いことも囁かれている。胡錦濤主席が北京・天津を政権の経済基盤とする腹積もりではないかというのだ。中国の中央政府は各地方からの上納金で運営されているため、経済力のある上海が中央に対しても伝統的に巨大な発言力を有してきた。首都と上海との関係はちょうど日本の江戸と上方のそれに似ている。上海人脈の跋扈に散々手を焼いた胡氏は、北京・天津を巨大経済圏に発展させるためにも海外の直接投資を必要としており、このことが胡氏をして日中関係の改善に急がせた要因のひとつではないかという見方もある。
 対日姿勢の変化には、胡錦濤政権の掲げる政治目標も大きく関係している。第17回中国共産党大会を経て政権二期目を迎える胡氏は、「科学的発展観」を新たな指導理論として位置づけ、持続可能で社会各層の調和のとれた「和諧社会」の構築を目標として掲げている。具体的にはそれまでの経済成長一辺倒の路線を軌道修正し、都市と農村の貧富の格差を縮小し、社会保障を充実させ、公害の防止・省エネ技術の充実といった環境保護重視の姿勢を政策として打ち出している。
 こういった政策は、日本が過去にずっと取り組んできたことであり、日本は国家として豊富な経験とノウハウを蓄積している。よって、中国が二期目の課題として掲げる政治目標を達成するにあたって、日本のガイダンスやノウハウ、あるいは投資の継続などが不可欠であると考えられる。実際、中国の新しい社会経済政策はまるで「日本」を目指しているかのようだ。今は爆発的な経済成長を遂げている中国であるが、いずれ低成長時代へと移行する。人口増加も今から20年後にはピークに達し、それ以降は減少に転じて少子高齢化社会を迎えるという。その宿命的に訪れる未来において、中国は成熟した近代国家へと変貌していなければならない。こういったプロセスは過去に日本が経験してきたことである。しかも、日本は同じ東アジアに属し、同じ人種であり、同じ漢字を使用する。中国にとって日本は、まことに手っ取り早いサンプルであろう。すでに日本の政官界は、中国からその過去の経験のデータの提出を各所で求められているという。中国における最近の市場経済に対応した法制定・改正(会社法や証券法、独禁法や物権法など)も日本のそれを参考にしているそうだ。
 いずれにせよ、以上のような国際・国内事情の変化により、中国は「日本と仲良くしたほうが国益にかなう」と判断した。これらが対日急接近の背景である。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

7・ドアから顔をのぞかせた中国に対して見返りをケチるな 日本向け1部(7/10) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

7・ドアから顔をのぞかせた中国に対して見返りをケチるな
 中国には対日関係の改善に本格的に取り組まなければならない理由があった。その機会をうかがっていたところへ、タイミングよく安倍政権が誕生した。06年9月。奇しくも胡錦濤氏が上海市党委書記の陳良宇を解任し、権力闘争勝利のデモンストレーションを行った時期と重なる。日本国内でも、中国の内需を当て込んでいる経済界はこれ以上、日中関係を悪化させたくなかった。安倍前総理には関係改善の期待が高まった。こうして両国関係はこの時期に底を打ち、以後、現在に至るまで急速に改善に向かっている。
 安倍前総理は卓越した外交センスの持ち主だったようだ。政権誕生後、真っ先に行った訪中のタイミングは絶妙だった。政争を勝ち抜いた胡錦濤閥に対する祝賀のメッセージを含んでいたのだろうか。また中国側としても、党の中央委員会総会初日に日本の総理を迎えたことは、日中関係重視の姿勢を内外に深く心象付けた形となった。1年という短い在任期間ではあったが、安倍氏は中国との間に「戦略的互恵関係」を構築することで合意するという道筋を残した。また、相手の計算づくの「日中友好」に応じつつも、一方で共産党独裁体制に対するけん制である「価値観外交」を掲げた。オーストラリアやインドとの関係強化も、「これは中国封じ込めではないか」と中国人を恐れさせるほどの外交的効果を発揮した。硬軟の二刀流を使い分ける安倍氏の外交手腕に、中国側も「侮りがたし」との印象を抱いたに違いない。
 ちなみに余談だが、オウムのように日中友好を唱え、中国に対する批判を決して口にしない一部の日本の政治家を中国人は決して尊敬していない。内心で「利用価値のあるバカ」としか思っていない。河野洋平氏などはこの典型であると思われる。福田新総理がこのような侮りを受けるはずがないと、山田は信じている。
 さて、07年4月に温家宝首相が来日し、日中は戦略的互恵関係の構築で一致をみた。中国指導部は「戦略的互恵関係の構築を通じて、平和共存・代々友好・互恵協力・共同発展の目標を実現する」とうたっている。これを「16字の方針」と呼ぶそうだが、かつての胡耀邦元総書記の「四原則」の再来を思わせ、胡錦濤現総書記の並々ならぬ意気込みを感じさせる。おそらく中国側としては「親日派・胡耀邦氏の再来」を印象付け、「また当時のように日中蜜月時代を築きましょう」という意味を込めたのだろうが、ハイレベルはともかく、日本の一般市民は温氏に非常に冷ややかだった。
 だが、中国側の意欲をうかがわせるものとして、注目すべき変化が見られた。安倍前総理は「拉致問題の解決」と「国連安保理常任理事国入り」の2点に関して温家宝氏に協力を要請したが、中国側は以前とは打って変わって協力的な姿勢を見せたのだ。
 むろん、文字通り「見せた」だけであり、現段階では実行の伴わないリップサービスでしかない。だが、かつては前者に関して「日朝間の問題だ」と冷たく突き放し、後者に関しては人民を操ってまで対日非難轟々を展開した国である。今や中国は、明らかにドアから顔をのぞかせ、半身を乗り出しているのだ。
 この「踏ん切りがつかないで迷っている状態」の中国に対して、ここは思い切って彼らが必ず食らいつきたくなるような大きな“エサ”を投入すべきだと思うのは、私だけだろうか。この2点の実現によって福田新政権と与党が得られる巨大な政治的利益、また将来にわたって得られる戦略的国益に想像を馳せれば、判断に迷うべくもない。ここは小さな損失をケチるあまり、大きな利益を逃すべきではない。「ODAに代わる新たな資金メカニズムによる対中環境改善支援」程度では、エサとしてあまり小さすぎる。
 ここはやはり「山田案」をエサとすべきではないだろうか。
 すなわち、「日本はODA3兆円の債権放棄をもって中国および中国人民に対して過去の戦争賠償を実施する」という趣旨の「新日中条約」を締結しようではないか、と胡錦濤政権に持ちかけるのである。
 胡錦濤氏はこの巨大な見返りに狂喜し、必ずや日本の要望に応えるであろう。
 思えば、あの日朝首脳会談から5年あまりが過ぎたが、拉致問題は未だにこう着状態のままだ。国連安保理の常任理事国入りに至っては、日本は国際的恥さらしに等しいドタバタ劇を繰り広げてしまったといえる。
 この2点の失敗に共通していることは、実現に当たって中国の協力が得られなかったことである。中国の協力が不可欠であることを最近まで理解していなかった、と言ったほうが正確かもしれない。だが、私はこのことを03年1月の段階でいち早く指摘し、さらに04年7月にはより明確に指摘していた。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
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8・日中新時代をもたらす戦略的互恵外交・その1 日本向け1部(8/10) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

8・日中新時代をもたらす戦略的互恵外交・その1
 機は熟した。中国は対日接近を本格化させている。今こそ日本政府が「山田案」を果断に実行に移し、大きな国益を勝ち取るべき時期ではないだろうか。
 07年4月、日中は「戦略的互恵関係」の構築で合意したが(*注)、私はこの国策方針に合致する形で「山田案」を両国が真に利益をえる「戦略的互恵外交案」へと発展させることにした。狙いは、政財界・有識者クラスのハイレベルな関係強化よりも、第一に互いの人民感情を劇的に好転させることである。実際、これが実施されれば、相互に相手国の人民に対する強烈なアピールとなり、日本人と中国人民は共に熱狂するだろう。
 
・ 第一段階……まず初めに中国が日本に対して「良いボール」を投げる。それは中国が北朝鮮に囚われている日本人拉致被害者とその家族全員を救い出すことである(*前述のように、この部分は「通常策」と、それが失敗に終わった場合の代案である「非常策」に別れる)。できれば胡錦濤国家主席が彼ら生存者を引き連れて、特別機で来日する。これにより胡錦濤氏は一躍、日本国民の英雄と化すだろう。日本人は皆、彼を「恩人」と称えることになる。
・ 第二段階……次は、前回の返礼の意味をこめ、日本が中国に対して「良いボール」を投げる。日本の総理が北京を訪れ、過去の日中共同声明等を発展解消した「新日中条約」を締結する。この21世紀の条約には新しい条項が追加されている。それが「日本はODA3兆円の債権放棄をもって中国および中国人民に対して過去の戦争賠償を実施するものとする」という項目である。これは何よりも中国人民に対する直接的なアピールとなるだろう。そして日中両国の間に長年、楔として横たわっていた「歴史問題」はついに解決する。
 
 ここで上記について解説する。
 このように、日本が中国の手を借りて「北朝鮮による日本人拉致問題」を解決することと、「ODA3兆円の債権放棄」という形で中国が日本から「戦争賠償」を獲得することは、交換条件になっている。どちらか一方だけが利益を得るのではなく、まるでキャッチボールのように両国が「互いに相手のためになる外交」を行うことが成功の要である。
 むろん、中国によって第一段階が実行されない限り、日本が第二段階を実行する必要がないことは言うまでもない。また、中国に提案する際に、たとえば「08年末までに実行すること」という具合に期限を設けたほうがいいだろう。
 そもそも、日本が上記のような外交を実行するためには、先んず国民の理解が得られなければならない。でなければ、世論が選挙で審判を下す。要は、政府が中国に対して賠償を実行することを民意が許さなくてはならない。それゆえ、まず初めに胡錦濤国家主席が日本国内で恩人視・英雄視される出来事が必要であり、それこそが胡主席の尽力による日本人拉致問題の解決なのである。そうすれば、親中で熱狂した日本の世論は、中国のためにODAの債権を放棄することに賛成し、政治家もまた安心して次の選挙に備えることができるだろう。なにしろ日本人は「空気」に従う民族である。
 ちなみに、07年から来年にかけての日中の外交日程では、まず先の温家宝首相の訪日の返礼として日本の福田総理が訪中し、そして胡錦濤国家主席が来年4月あたりに訪日することが一応、予定されている。
 また、この第一段階の際、日中友好の「空気」また「ムード」を両国で盛り上げるために、私は以下のような政治的演出の実行を提唱したい。
 それは来日した胡錦濤国家主席に皇居で天皇皇后両陛下と並んでもらい、日本人が万歳三唱する熱烈歓迎を受けていただく、というものである。そして、その映像を日中両国全土さらには全世界に向かって放映するのだ。この演出により、日中関係が根幹から変化した事実を世界に印象付けることができる。
 むろん、胡主席は日本国内で英雄と化すだけでなく、中国内とその他の世界においても名声を獲得することができるだろう。中国は人権問題で国際社会からいつも叩かれているので、胡主席が純粋に人道上の問題を解決してみせることは格好の汚名挽回の材料となるに違いない。そして第二段階の「新日中条約」調印により、胡主席の権威・カリスマはさらに高まることになる。毛沢東・周恩来は、台湾と争っていた国家正統性の問題に拘泥したこともあり、72年の日中共同声明において日本に対する賠償請求を放棄するという判断を下した。この最初のボタンの掛け違いにより日中両国の歯車は常にかみ合わなくなったが、重要なことは今日この決断が中国人民から「歴史的なミス」との烙印を押されているという事実である。よって、もし胡主席がこれを正せば、その権威と名声は毛・周両氏に並ぶ歴史的なものとなる。かくして、政権第二期がスタートする直前に、胡錦濤政権は国内での統治権威の高揚と完全なる権力基盤の確立に成功することができるのだ。
 いずれにせよ、以上の「戦略的互恵外交」を実行すれば、日本側は拉致問題を解決することができ、また中国側は戦争賠償の獲得という政治的・経済的利益を得ることができる。日中双方がともに利益を得ることができるのだ。

*……07年4月の温首相来日の際、日中首脳会談が行われ、両国は以下の共通認識に達したとの日中共同プレス発表が行われた(以下「戦略的互恵関係の基本的な内容」)。
 1)平和的発展を相互に支持し、政治面の相互信頼を増進。各々の政策の透明性に努力。
 2)エネルギー、環境、金融、情報通信技術、知的財産権保護等互恵協力を深化させる。
 3)防衛分野の対話及び交流を強化し、共に地域の安定に向け力を尽くす。
 4)相互理解及び友好的感情を増進。青少年、メディア等の交流、文化交流を強化する。
 5)朝鮮半島、国連改革、東アジア地域協力等、地域及び地球規模の課題に共に対応。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
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9・日中新時代をもたらす戦略的互恵外交・その2 日本向け1部(9/10) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

9・日中新時代をもたらす戦略的互恵外交・その2
 以上の第一・第二段階でも日中関係は大いに改善するが、この際、改善に向かって勢いのついた両国関係をさらに前進させ、それを固定化させるべく、さらなる「互恵外交キャッチボール」を続けるべきである。
 では、その後に続く「キャッチボール」について述べる。
 
・ 第三段階……中国が日本の国連安保理常任理事国入りを支持する。英米仏はすでにOKしているので、残るはロシアの説得だけということになる。今ではロシアも前向きである。おそらく日本は同メンバー入りを確実にする。これにより、中国との過去の清算問題を終わらせたことと相まって、日本は本当の意味で「戦後」を終わらせることに成功する。
・ 第四段階……日本は上記への感謝・返礼として、中国の環境問題改善のために国家の総力をあげて協力することを表明し、かつ実行する。その資金として、日中両国は先に破棄された日本のODA債権も積極的に活用する。これにより中国はもはや日本に対して返済する必要のなくなった「浮いた資金」を環境対策に投じることで自国の環境改善を加速化することができ、日本もまたこの協力を通して京都議定書の温室効果ガス削減目標値に近づくことができる。
 
 上記について解説する。
 中国が日本を国連安保理の常任理事国に迎え入れることは、実は中国にとっても大いにメリットがある。わが国はこの点を彼らに強調すべきだ。
 第一に、アジアのライバル国をパーマネント・メンバーに引き入れた決断により、中国は世界から「寛大かつ度量のある大国」と見なされ、国家の威信を高めることができる。それはまた日本に恩を売ったと同時に、常任理事国内に味方をひとり作り、将来の孤立を防いだ結果にもなるだろう。これが第二のメリットである。
 周知のとおり、現在、西洋世界では急速に「中国異質論」が台頭し始めている。欧米での中国非難の代表的なものとしては、「天然資源欲しさにアフリカの非人道的な独裁政権を支えている」、「危険な食品を輸出するモラルのない国だ」、「知的所有権を侵害しつづけ、われわれに損害を与えている」…といったものが例として挙げられる。中国に対するネガティヴなイメージがマスメディアによって急激に拡大生産され始めた。とくにアメリカでは議会で対中非難決議が幾度となく繰り返され、有力議員による激しい中国非難が相次いでいる。中国が毎年二桁の水準で軍事力を増強し、石油欲しさに反米国家と連携していることも、アメリカの対中不信感を増大させている。
 ロシアは今のところ「親中」であるが、プーチン政権以後はその保障はない。なぜなら、ロシアでは一般国民レベルで中国に対する敵意と警戒心が徐々に高まりつつあるからだ。上海協力機構も「同床異夢」といわれている。中国政府は「ロシア人民は親中である」と思い込みたいらしく、その種のアンケート調査を公表しているが、これは明らかに政治的に作られた虚偽だ。ロシア国民の右傾化と対中警戒心の高まりを考えるなら、ロシアもまた何かのきっかけで「反中」に転じる可能性が十分にあると言わざるをえない。
 このように、現実に「中国異質論」が世界的に高まりつつあり、将来、中国が国際的に「四面楚歌」に追い込まれることを防止する意味でも、日本の同常任理事国入りを後押して味方として引き入れておいたほうが、中国としてもメリットが高いはずだ。
 ただし、胡錦濤政権がこのような「親日行為」を実行するためには、国内の政敵の力が削がれている必要があり、そういう意味でも前段階として「新日中条約」の締結による胡錦濤氏のカリスマ性の向上は不可欠であると考えられる。
 むろん、中国が日本の国連安保理常任理事国入りを後押しすること自体が「交換条件」である。この「第三のボール」の返礼として、今度は日本が「中国の環境改善に協力する」という「第四のボール」を投げ返すのだ。
 周知のとおり、中国の環境問題は深刻である。河川の枯渇や水源・土壌の汚染、産業界におけるエネルギーの無駄遣いや森林の減少と国土の土漠化といった問題は、4千年の歴史を終わらせかねない危険性を孕んでいる。この対策のためには、数十年前に公害問題や石油危機を克服した日本の経験と技術が不可欠だ。中国の環境改善には巨額の投資が必要であり、環境省はこの分野の将来の市場規模を12兆円と試算している。それを見込んで日中両政府の思惑も一致し、協力体制がすでに始動している。
 中国は現在、毎年、日本へのODA返済として1千億円以上を充てているが、仮にその借金が「新日中条約」により帳消しになれば、浮いた資金を丸々環境対策に投じることも可能となる。これを環境省・経済産業省が進める対中環境ODAと併用すれば、中国としても環境改善スピードを“倍化”させることが可能となる。むろん、その対策を日本企業が受注する仕組みを作れば、日本もまた京都議定書が定める温室効果ガスの削減目標の達成にいっそう近づくことができるし、その過程で中国はさらに日本企業の先端環境技術を吸収することもできよう。
 京都議定書の議長国であり、数値目標導入の提唱国である日本は、1990年度基準で6%の温暖化ガス排出削減を国際社会に公約している。しかし、現状は「プラス8%」という危機的状況である。この目標を日本は2008年から12年の間に実現しなければならない。そのためには「京都メカニズム」と呼ばれる、他国の排出権購入と削減協力によりその削減量を自国のものとしてカウントする方法に頼るしか道はない。そのために日本は中国の環境問題改善に尽力するしかないが、これでは中国が一方的に利益を得ることになり、あまりにアンフェアである。しかし、日本の国連安保理常任理事国入りを中国が後押しすることが「交換条件」となれば、「中国は他人のフンドシで相撲を取っている」という不公平感もある程度は解消され、日本の世論も納得することができるだろう。
 いずれにせよ、これにより中国は自国の環境問題をさらに改善し、また日本は炭酸ガス削減目標の達成により近づくという、一石二鳥の結果となるのだ。
 このようにして日中が互いに「互恵外交」のキャッチボールを行い、日中双方がともに利益を得てこそ、本当の意味での「戦略的互恵関係」と呼べるのではないだろうか。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
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