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17・対北戦略はゼロベースでの見直しが必要だ 日本向け2部(17/20) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

17・対北戦略はゼロベースでの見直しが必要だ
 以上の意味するところが従来の対北戦略の誤りと頓挫でなくて何であろうか。
 このような現実は苦いものである。だが、現実こそが真理であり、仮に現実と戦略が齟齬をきたした場合、それは戦略が間違っていることを意味する。
 ところが、かつてこの単純な真理に気付かなかった集団、否、国家があった。戦前の日本軍であり、大日本帝国である。当時の戦争を指導したのは日本一のエリートと呼ばれた陸大卒の集団である。だが、その人たちは破滅するまで現実を受け入れなかった。今日の日本でも、このような過去の誤りが踏襲されてはいないだろうか。
 私は現在の日朝間の状況を、弾こそ飛ばないが事実上の「日朝戦争」と位置づけている。戦争に勝つとは、戦争目的を達成することである。その目的とは、拉致問題を解決することである。現在、政府は「拉致被害者とその家族の生存者の帰国」「真相究明」「拉致被疑者の引渡し」の三点セットをもって「拉致問題の解決」と一応定義している。後の二つはとりあえずは後回しでもいいだろう。つまり、「拉致された日本人を取り戻す」ことこそ、今次日朝戦争におけるわが国の戦争目的に他ならない。
 この目的は未だに達成されてない。最近は「拉致敗戦」という言葉まで使われ始めた。戦争は戦略に基づいて遂行される。その戦略が正しいか、間違っているかを判断するのは簡単である。勝利していれば戦略は正しく、敗北していれば戦略が間違っているということだ。よって、わが国の従来の対北戦略は間違っていたことが証明されたのである。
 これからも「日朝平壌宣言に基づいて粘り強く説得」したところで、また経済制裁を実行しつつ他方で「拉致問題などの諸懸案を解決すれば国交正常化して莫大な経済援助をしようではないか」と囁いたところで、北朝鮮が拉致被害者全員を返還することはないだろう。彼らはあくまで日本を政治的に追い詰め、妥協を引き出す作戦である。
 現在の政府の方針は、「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化もなし」というものだが、では仮にこの方針をひるがえせばどうなるだろうか。つまり、先に国交正常化し、莫大な経済援助を与えた場合、北朝鮮は拉致被害者全員を返還するだろうか。
 この可能性もやはりありえない。仮に彼らが事前に「返還しよう」と口約束をしたとしても、結局は裏切るだろう。なぜなら、彼らは「己の利己的な利益を貪るためにいかに相手を騙し、利用するか」という行動基準以外は持たないからだ。「貰うモノさえ貰ったら、あとは恩を仇で返す」というのが彼らの一貫した姿勢である。
 そのことに関してはすでに前例がある。日本はかつて北朝鮮に対して大量の米や医薬品などの援助を実施した。金正日政権への事実上の献金に等しい朝銀への1兆数千億円もの公的資金投入にも応じた。だが、これで相手が日本に対して何らかのお返しをしただろうか。なんでも後に「日本が謝罪の米を持ってきたので、貰ってやった」とうそぶいたそうである。02年の日朝首脳会談の際も、拉致の事実をギリギリまで認めなかった。金正日がそれを認めて謝罪したのは、そうしないと経済援助が貰えないと思ったからだ。要は欲に駆られただけの話であり、本心から己の非を認めたわけではないのである。
 今ではロシアと中国もこの点で北朝鮮を見放している。彼らの北朝鮮観もまた「いくら援助してやっても恩を仇で返す」というもので、このような感想はどうやら万国共通らしい。今や韓国の左派政権までが「過去の清算」なる名目で日本から巨額の経済支援を毟り取ろうという貪欲な目論見に加わり、南北朝鮮共同で日本に敵対し始めた。彼らは今後とも強請り・タカリ以外の対日行動をとらないだろう。こんな連中と本気で「対話」ができると信じている人がいるとしたら、よほどの性善説の信奉者に違いない。
 私が心配しているのは、「このままでは埒が明かない」と思った日本政府が妥協案に傾くのではないかということだ。たとえば、「拉致問題のシンボル的存在である横田めぐみさん他数名の帰還」と「よど号メンバーの引渡し」程度で「拉致問題は一応の解決をみた」と再定義し、国交正常化に動き出すことである。
 だが、これこそ北朝鮮が待ち望んでいる行動である。彼らは「日本側を妥協させるには安倍の強硬路線が通用しないことを思い知らせればいいのだ、そうすれば日本は対話重視に転換する」と考えていたはずである。だから、安倍政権の時には「対話しない」と言って公には扉を閉ざしたのだ。よって私ならば北朝鮮の事前の思惑とはあえて逆をいく。つまり、より一層の強硬路線であり、さらなる制裁の連発である。
 そうすれば北朝鮮は、「せっかく安倍を退陣させたのに、福田が予想通りの対話路線ではなく強硬路線に転じたとはどういうことだ?」とひどく混乱するだろう。そして従来の対日分析の誤りを認め、「拉致問題で日本側を妥協させることは、どうあがいても不可能なのだ」と諦めるに違いない。
 だが、福田政権がこのような「逆転の発想」に打って出る気配はなく、むしろ敵の予測通りの行動をとる可能性が高い。それに合わせるかのように北朝鮮勢力による日本国内の世論工作も活発化している。インターネットなどでは、拉致問題に対して早期幕引きの空気を作り上げるために、とくに拉致家族会の信用を失墜させることに力点が置かれている。おそらく在日朝鮮人工作員によるものと思われるが、被害者のご家族である横田氏や増元氏らに対して、「税金の無駄遣いだ」「政治に口を出すな」「日本国民はもう支持していない」などの罵詈雑言が浴びせられている。また、必ずしもこの工作に影響されたわけではないだろうが、「拉致問題疲れ」のためか国内の雰囲気も微妙な変化を見せ始めている。
 私は、政府がこのような国内の情勢、また非核化を成し遂げた北朝鮮に対して見返りを与えていくという国際社会の流れに影響されて、「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化もなし」という従来方針を修正し、「拉致問題に少しの進展があれば北朝鮮との国交正常化もありうる」という方針に転換するのではないかと恐れている。
 だが、このような意味での対北戦略の見直しは、日本の歴史に必ずや禍根を残すことになるだろう。北朝鮮の思惑通りであり、すなわち「拉致敗戦」への序章に他ならない。
 政府の対北戦略に今一番求められているのは、従来にはないまったく新しい発想である。そして日本にはまだ対案が残されている。そのひとつが「山田案」である。これは日本が自身のインテリジェンスで戦後最大の国難を解決しうる可能性を示している。
 たしかに、山田案は従来策とはまったく異質の策である。なにしろ、「不幸な過去の清算」とか「日朝国交正常化」といった行為を根本から否定している。そのようなことは一切やる必要がないと主張している。代わりに「ODAを戦争賠償として放棄することを謳った新日中条約の締結をエサとして、中国を拉致問題解決に駆り立てろ」と訴えている。
 このような発想はまったく素人のそれであり、荒唐無稽で常識外に思われるのも仕方がない。だが、逆にいえば、ゼロベースでの刷新を迫られた場合、従来策とはできるだけかけ離れた策に着目するのも有力な手である。戦争とは生きものだ。ゆえに常識に束縛されてはならず、勝利のためにはあらゆる可能性を模索する柔軟性が必要である。
 実は戦争においては、意外と個人の発想や才能がモノを言う。仮に秋山真之や明石元二郎がいなければ日露戦争の行方はどうなっていただろうか。「彼らがいなければ、その代わりが現れていた」と考えるのは間違いである。その証拠が太平洋戦争だ。満州国を建国しながら、日中戦争には反対し、対米決戦をはるか後に設定していた石原莞爾は、一時期、陸軍参謀本部のトップに立って戦争を指導してもおかしくはない軍内コースにいた。だが、彼はそこから締め出され、代わってトップに立ったのが東条英機だった。石原に代わる者はどこにもいなかったのである。その結果が先の悲惨な敗戦だった。
 苦い現実を直視できず、あくまで従来の誤った戦略にしがみつけば、拉致問題も敗戦という結果を迎えるだろう。だが幸い、日朝戦争はまだ継続しており、敗戦が確定したわけではない。今ならまだ軌道修正が間に合う。従来の戦略が間違っていたならば、別のやり方を採用すればよいだけだ。そして日本にはまだ対案がある。
 たしかに敗北の現実を認めるのは苦渋であり、格別の勇気がいる。戦略のほうを修正すべきとは考えず、現実のほうが間違っていると考えるのが、とくに自己の無謬性にこだわる役人の病弊であると言われている。だが、真の政治家ならばそうではないはずだ。
 とくに戦略全体を俯瞰しつつ、今次日朝戦争を指揮する立場にある最高司令官ならば。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

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