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18・専制国家特有の弱点と極東安保体制の急変に注目すべきだ 日本向け2部(18/20) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

18・専制国家特有の弱点と極東安保体制の急変に注目すべきだ
 さて、以下に改めて山田案の有効性を訴えていきたい。
 私は「わが国は相手の弱点を間違えてきた」と言ったが、では真につけ入ることのできる弱点とは何だろうか。それは大きく分けて二つある。
 02年の日朝平壌会談から5年。「終身政権」である金正日は、拉致問題を筆頭とする対日外交にあたり、常に長期の戦略で事に当たることが可能であったため、今次「日朝戦争」においてはわれわれよりも常に有利な立場にあったといえる。
 しかし、時間の経過はひとつだけ日本に有利な点をもたらした。それこそが金正日の「老い」なのである。1942年2月生まれの金正日は現在65歳だ。しかも病魔に蝕まれているという説もあり、事実、長期にわたっていわゆるメタボリック症候群であることは素人目にも明らかであり、循環器系に障害を抱えていたとしても驚くに値しない。
 独裁者は老いた。権力中枢にいる誰もが内心で「金正日政権の先は長くない」と思っているはずだ。世宗研究所の室長によると、「満70歳になる2012年を前後して次男の金正哲(ジョンチョル)を公式指名する可能性が高い」という(韓国中央日報07.10.01)。だが、後継者が誰であれ社会に喧伝されていない状態というのは、換言すれば「軍民の忠誠心が未だ新しい指導者に向いていない状態」であることを意味している。
 つまり、現在は「独裁者の先が長くないにもかかわらず、社会を掌握できるその後継者も決まっていない状態」という、実に微妙な時期なのである。このような時期が政治的に不安定と化すのは専制国家特有の欠陥である。そして以上が第一の弱点なのである。
 この状況こそクーデターのチャンスである。なぜなら、独裁者の取り巻きたちがもっとも浮き足立ちやすい心理状態にあると考えられるからだ。中国や李氏朝鮮の王朝史を見ても分かるように、このような時にこそ指導内部が紛糾し、党争や内乱が頻発する。
 私は拉致問題を根本から解決する一つの策として「クーデター使嗾策」を挙げた。
 私が現在、このような急進的な策に傾いている理由も、「独裁者が老い、後継者も未だはっきりしない」という、このような現北朝鮮情勢を鑑みてのことである。戦争は刻々と変化する生きものであるから、何よりも柔軟性を失ってはならないのだ。
 問題はこのような提案を中国が受け入れるか否かであるが、「必ず受け入れる」と確信するに足る理由がある。一つは水面下での中朝関係の悪化である。もう一つは、それと関連して極東の国際情勢・安保体制が根幹から変化しつつあることだ。
 これが現在、北朝鮮が抱えつつある第二の弱点である。
 現在、中国側が北朝鮮に対してひどい不満を募らせており、このことは最近刊行された『対北朝鮮・中国機密ファイル』(文芸春秋)でも明らかにされている。それに伴い、米朝接近はあるアメリカの裏の意図を浮き彫りにしつつある。それは北朝鮮を対中国の駒に仕立て上げようという目論みである。イラクに次いで北朝鮮を攻撃するつもりだったネオコンの時代には、北の核ミサイルは日米に向けるために開発されていたが、米朝が対中国で地下同盟を結べばそれが中国向けへと変化することは必至である。これに対して中国がどのような危機感を募らせているかは想像するまでもない。
 かつて北朝鮮は、中国にとって「対米緩衝地帯」としての戦略的価値があった。これが朝鮮戦争の際、連合軍の反攻が鴨緑江まで迫った際に毛沢東が大規模な介入を決意した理由である。だが、今や韓国のノ・ムヒョン政権が戦時作戦統制権の返還を主張しており、米韓首脳はそれに合意した。アメリカ側は09年の前倒し返還の実施を主張している。この流れは朝鮮戦争の休戦状態の終結と在韓米軍の最終的な撤退を意味している。これによって中国から見た北朝鮮の戦略的価値が根本的に変化した。はっきり言えば「支える価値がなくなった」ということである。
 実はこの「中国に対する戦略的価値の喪失」こそが、北朝鮮にとっての大きな弱点なのである。それまで中国は、北朝鮮という国家を「お荷物」と思いながらも、食糧や燃料を供与してその体制の崩壊を防がねばならなかった。だが、米軍撤退の流れが決まった今では、北朝鮮は本当に「ただのお荷物」と化してしまった。いや、あえて支える必要がなくなっただけでなく、邪魔者・危険物とすら化しつつある。おそらく、現在の中国の眼には、以下のように映っているはずだ。
 中朝関係の悪化とその裏返しである米朝接近に伴い、北朝鮮は何やらアメリカと裏取引を始めたらしい。せっかく在韓米軍が撤収し、朝鮮半島が丸ごと太平洋の海洋勢力に対するバッファーになると楽観していたのに、どうやら肝心の北朝鮮がわが中国を裏切ってアメリカの手先になろうとしている。近い将来、北朝鮮は米軍を呼び込んで核ミサイルさえ中国に向けかねない状態だ。これはわが国にとっての“キューバ危機”である…。
 このように危惧する中国にとって、金正日政権は今や国益に反する邪魔者に他ならないはずだ。つまり、驚くべきことに、今や金正日を排除する点において日中の国益が一致しつつあるのだ。これで中国はますます日本の対北政策における臨時同盟国にふさわしく変化したわけである。03年1月の段階から「拉致問題解決の鍵は中国である」と一貫してブレずに主張し続けてきた山田案の正しさが改めて証明されたと言えよう。むしろ今では金正日と裏で何かの密約を交わし、日本人拉致被害者を切り捨てたアメリカのほうが、逆に拉致問題を解決するにあたっての障害であると評したほうが正確ではないのか。
 よって、仮に日本が上記の「クーデター使嗾策」を中国に提案すれば、非常に歓迎されるに違いない。ODA債権の放棄はそのための代金も兼ねていると考えればいい。
 中国としても、クーデターによって金正日政権を転覆させ、その数年後に半島を統一させても問題はなくなった。むしろそうしたほうが朝鮮半島を丸ごと太平洋の海洋勢力に対するバッファーに仕立て上げることができる。しかも「同じ民族」の韓国が存在するおかげで、厄介な後始末を押し付けることも可能だ。今までは生意気な属国に懲罰を加えたくてもできなかったが、それが遠慮なくできるようになった。よって北京オリンピックの終了後ならば、胡錦濤政権は金正日を排除することに対して躊躇しないだろう。
 以上の「二つの弱点」を考慮するなら、日本政府がとるべき拉致問題の解決策が山田案以外にありえないのは明白である。幸い、中国にはこの種の作戦を実行するだけの情報力・政治力・軍事力がある。日本にはどれもない要素ばかりである。
 ところで、いやしくも戦後平和日本がクーデターによる外国政権転覆を共同謀議、あるいは自分から申し出たという事実が国民に知れ渡った場合、どう対処すればいいのかという心配を抱く政治家もいるかもしれない。内閣が、与党が倒れるのではないかと危惧する人もいよう。だが、私はそのような考えはまったくの杞憂であるとして一笑に付す。
 これは日朝戦争である。われわれは国家の命運を賭けて勝利せねばならない。非常手段は当然であり、それによってわが国は拉致問題を根本から解決し、その真相をついに明らかにすることができる。おそらく、拉致された日本人の数は数百人、そして死亡率は場合によっては過半数…というのが真相ではないか。それを知った時、国民はどんな反応を示すだろうか。誰もが驚愕し、恐怖し、激怒するだろう。そして「よく腹をくくって大胆な決断をしてくれた」と福田総理と政府を高評価するに違いない。社民党の「戦時中の日本を思い起こさせる」等の小児左翼的な主張は激昂した世論の前に一蹴されるだろう。
 よって、逆に「金正日をクーデターで打倒したのは日中共同作戦であり、大本はわが国の発案だ」というふうに堂々、胸を張るほうが政治的に得策ではないか。私ならば09年に予定されている総選挙での圧勝を睨んで、そのような積極策に出るだろう。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

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