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5・アメリカの対北政策の真の目的を考える 日本向け2部(5/20) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

5・アメリカの対北政策の真の目的を考える
 しかも、私の考えでは、日本は北朝鮮観を誤っていただけでなく、アメリカの対北政策の本音をも見誤っていた可能性がある。以下は仮説を多く含む。
 07年10月の6カ国協議では北朝鮮の非核化について合意をみたが、明らかに国際社会を欺ける余地を残している。すでに廃施設同然とも言われる寧辺の核3施設を無能力化し、第2段階措置として年内の“すべての核計画の完全かつ正確な申告”を北朝鮮に義務付けているが、ウラン濃縮施設と既存の核兵器の扱いについては曖昧なままだ。
 実に不可解である。もともとウラン濃縮計画の発覚が94年の米朝枠組み合意崩壊の発端であるのに、現在、アメリカはその核開発疑惑の本命にはあまり触れたがらず、追及に消極的な姿勢を見せているのだ。
 仮にアメリカが本心から北朝鮮のプルトニウム保有とウラン濃縮計画を容認していないとする。その場合、プルトニウムについては、原子炉から放出される特定元素という物的証拠があるので、北朝鮮としても保有それ自体をごまかすことはできない。だが、保有量は推定でしかないため、個数自体はごまかすことが可能だ。ウラン濃縮施設についても同様、黙秘を通すか、あるいはごまかし切れないと悟るやほんの一施設を差し出してみせるのではないか。なにしろ、検証不可能なのだ。「相手の申告を信じるしかない」という状況では、いくらでもごまかしが可能である。おそらく、実際には複数のウラン濃縮施設がモグラの巣のように縦横に掘られた地下施設の各所に点在しているに違いない。
 つまり、北朝鮮は、数個の核兵器とその真の開発施設を隠蔽し、事実上の核保有国であり続けたまま、非核化2段階措置を“完了”し、最終的に北朝鮮をテロ支援国リストから外したアメリカとの国交正常化を成し遂げるとも考えられるのだ。
 また、ブッシュ政権にしても任期内に外交的成果を残すのが目的なので、内心では「申告して差し出したプルトニウムやウラン濃縮施設以外にも、北朝鮮はまだ何となく隠し持っていそうだ」と疑っていても、政治的に妥協してしまうに違いない。
 一方で、仮にアメリカが本音の部分ではそれを容認しているとしよう。実際、追及に消極的な姿勢を見る限り、この想定のほうが真実に即しているという気がしてならない。
 この場合、アメリカの意図が喧伝されている“非核化”とは別のところにあるからだと考えなければ、合理的な説明がつかない。6カ国協議自体、名目は朝鮮半島の非核化であるが、裏目的は「日本のカウンター核武装の阻止」と「天然資源の確保」であると囁かれているから、その場合、一つにはウランの確保が関係しているとみるのが妥当だろう。
 これに関しては戦前から日本帝国が調査し、ソ連の原爆開発の材料にもなった経緯があり、埋蔵量は400万tとも推定されている。そもそもブッシュ政権が当初から「悪の枢軸」との対決姿勢を明らかにした理由は、ピークオイルを見越したエネルギー資源の確保戦略とドル防衛戦略があり、「民主化云々」はその真意を糊塗するためだった疑いがある。そうすると、ネオコンと国務省の対北政策は正反対に見えて、その実、目的は最初からまったく同じであり、単にその手段――つまり強硬策と穏健策――をめぐって対立が生じていただけとも考えられる。要は、独裁政権を打倒してウラン資源を手に入れるか、それとも取り込むことで資源へのアクセスを容易にするか、という違いである。
 そしてその資源争奪上のライバルが中国であることを考えると、アメリカの不可解な行動の理由がいっそう鮮明になってくる。アメリカは昨今の中朝関係悪化につけこみ、かつて対ソ戦略として毛沢東の中国と国交樹立したように、今度は対中戦略として北朝鮮と国交樹立しようとしているのではないか。はっきり言えば、アメリカが北朝鮮を「対中国における駒」に仕立て上げるつもりではないか。いわば“逆キューバ危機作戦”である。こう考えると、アメリカの“甘い”態度にも十分な説明がつくだろう。
 つまり、アメリカの対北政策の本音は次のようなものではないか。
 第一に、将来のエネルギー源としてのウラン資源を確保すること。第二に、国交正常化を機に中朝を分断し、できれば対中国の尖兵に仕立て上げること。そして第三に、アメリカの安全保障にとってのみ有効な“非核化”措置を行うこと。
 第三の意味するところは「核不拡散」である。要はイスラム諸国やテロリストに核物質とその技術を譲り渡さなければよいということであり、逆に言えばそれ以外――核爆弾と中距離弾道ミサイルの保有――は大目に見るということだ。ちなみに、これに日本人拉致問題を併せると、わが国が対北政策の主軸に置いてきた「拉致・核・ミサイル」の問題になる。今やアメリカが拉致問題も切り捨てにかかっている現実を考慮すると、彼らは日本の安全保障に直結するすべての問題に対して関心がなく、どうでもよいのが本音なのだ。
 よって、わが国の対北政策とアメリカのそれとは、まったく反りが合っていないと結論せざるをえないのである。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

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