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6・日朝の「対話」はもう成立しない 日本向け2部(6/20) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

6・日朝の「対話」はもう成立しない
 北朝鮮のような専制国家相手に外交交渉を行う場合、その専制者個人の意志と人格を読む能力が要求される。07年10月現在の金正日は今、何を考えているのだろうか。私の予想では、金正日は己の対日方針にますます自信を深めている最中のはずだ。
 アメリカの真の目的がいずれにせよ、金正日の立場からすれば、瀬戸際外交を続ける過程で、イラクに次いで北朝鮮を空爆するつもりだったネオコンが後退し、国務省勢力が復帰してアメリカが対北宥和政策に転じたと映っている。
 金正日は「自分は賭けに勝った」とさぞかし狂喜したはずだ。
 対日本においては、拉致問題強硬派の安倍前総理の自民党が参院選で大敗し、安倍氏自身も辞任した。その間、猛烈に展開された「安倍降ろし」のネガティブ・キャンペーンの中にも北朝鮮が日本国内に有する影響力をフルに行使した結果が含まれていないとは、誰が言い切れるだろうか。
 このように金正日は日米両大国を出し抜いてみせた。彼は国内の権力中枢の取り巻きに対して「男を上げ」てみせ、権力基盤をさらに磐石のものした。よってその金正日が己の対日方針にますます自信を深めたであろうことは想像に難くない。
 このようなタフな人間を相手としていることを、われわれは今一度自覚しなければならない。彼は今こう確信しているのだ。「焦った日本が妥協してくるに違いない」と。独裁者をかくも増長させてしまったのは、日本の一部政治家が見返りも得られずに核とミサイルの開発資金の提供者である朝銀に1兆数千億円も公的資金を投入したり、1200億円ものコメ支援を与えたりして甘やかしてきた負の遺産といわざるを得ない。その結果として、わが国はいま独裁者の増長と政権の延命という形でツケを支払わされているのだ。
 仮に「対話重視」の福田総理が「国交正常化を優先するのが政治家としての私の使命である」などと考えているとしたら、まさに相手の思う壺である。北朝鮮は水面下で「あと数名だけ拉致被害者を返そう、これで『諸懸案は解決した』ということで正真正銘の終わりにしてほしい、そして国交正常化を行い経済援助をしてほしい」と打診してくるだろう。あるいはその際、すったもんだの交渉の末、政府認定残る12名の返還というレベルまで持っていくことができるかもしれない。そうなれば日本側にも「これでうまくいった、もうこの問題は終わった」などと喜ぶ者すらいるのではないか。
 なにしろ官邸は、日々「拉致問題に関して何らかの結果を出さねばならない」とか「日朝交渉を進展させねばならない」とか「北朝鮮の核問題に対して足並みをそろえている国際社会から孤立すべきではない」といったプレッシャーを受けている。金正日の狙いは、このような政治的苦境にある日本のほうが折れて妥協に応じることである。
 だが、仮にこの“悪魔の囁き”に屈したら、福田総理の政治生命が絶たれるとか与党が次の総選挙で野党に転落するとか、そういうレベルの話ではなくなるだろう。国家たるものが悪に屈した国恥の例として、それは子々孫々を恥じ入らせ、日本の歴史に重大な汚点を刻むことになる。関係者は後世の史家から言葉で切り刻まれるだろう。
 この拉致問題に関しては、すでに国民サイドのほうが正しい視点を獲得している。「拉致された日本人の生存者が全員帰ってこないかぎり国交を結ぶなどありえない」とする点で世論はほぼ一枚岩である。むろん、それは政府認定残る12名のことを指しているのではなく、文字通り「すべて」である。国民は百名以上が拉致されていると疑っている。
 そもそも国民は北朝鮮との国交正常化など望んでいない。北朝鮮は拉致問題に続き、ミサイルの発射と核実験まで強行した。「こんなゴロツキ国家とわざわざ国交を結んで経済援助などしてやる必要はない」というのが国民の大多数の本音である。仮に「北朝鮮と国交を樹立したいと思うか? また、する必要はあるか?」というアンケートをやれば、そのような民意が必ずや圧倒的多数で反映されるであろう。「国交正常化してもよい」と答えるには、最低でも「拉致問題が『完全解決』した場合においてのみ」とか「金正日体制が崩壊した場合においてのみ」という必須条件が付くに違いない。
 もしかして福田新総理はこのような民意を読み違えてはいないだろうか。もし、小泉氏の真似をして“電撃訪朝”し、「拉致被害者数名の返還・よど号犯人の引渡し」程度で「拉致問題は解決した」として幕引きし、国交正常化を約束した場合、福田総理の政治生命は一発で止めを刺されるだろう。いや、自民党そのものが吹っ飛ぶ可能性がある。政治家に対するテロ・暗殺が横行するといった暗黒の時代が再来するかもしれない。
 つまり、3度目の日朝首脳会談のシナリオは、拉致被害者の全員返還がかなう場合においてのみ政治的な得点となるのであり、それ以外の結果は逆にマイナスに作用すると覚悟したほうがいい。国民の北朝鮮に対する見方はそこまで厳しくなり、拉致問題解決に対する要求水準も高くなったのだ。小泉元総理の頃は数名の返還だけでも「よくやった」とそれなりに評価する声があったが、3度目にはその常識も通用しないだろう。むしろ日本の総理大臣たる者が連続して3度も訪朝させられたうえ、小バカにされる結果を掴まされてきたとして、非難の声のほうが大きいと思われる。ましてやそれで国交正常化を約束したとあっては、国内にどんな暴発が起きるかも予想できない。
 むろん、己に対する自信を深めつつある金正日は、このような日本の国民感情とはまったく逆に、拉致問題に関してはあくまで日本側が譲歩すべきだとの考えをますます強めており、その欲求が実現するまで気長に「待つ」戦略でいると思われる。参院選に敗北した途端、安倍前政権が「過去の清算」を言い出し、また福田新総理が「対話」を強調したことも、相手を増長させる誤ったメッセージになったと思われ、逆効果だった。つまり、金正日に従来の対日方針の正しさを確信させてしまったに違いない。彼らは日本国内に巨大な情報網を張り巡らせ、政界にも浸透しているため、日本の出方を逐一よむことも可能であり、現在、それを通して己の方針に自信を深めつつあるのは間違いない。
 以上のように、両者の心理的な隔たりは以前にも増して大きくなったというのが、現状に対する私の認識である。そしてこのような乖離は、もはやいかなる対話によっても埋めようがなく、よって以後の交渉は(儀式としての意味はあっても本質的には)すべて無意味であるというのが私の主観的見方である。もし両者の間で成立するものがあるとすれば、それは「対話」ではなく「日本側の妥協」だけであろう。
 つまり、もう日朝二国間で拉致問題を真に解決することは永久に不可能なのだ。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

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