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1・法理的には正しかった最高裁の棄却判決 日本向け2部(1/20) [北朝鮮による日本人拉致問題の解決策]

はじめに
 1部で述べた私の提唱する拉致問題の解決策を簡単にまとめてみよう。
 まず土台として長期の国家戦略の方向性に沿って考え出された「日中戦略的互恵外交」がある。その枠内で、日中は第一段階から第四段階までの互恵外交のキャッチボールを行うが、拉致問題の解決策に当たるのは第一段階だ。それは「通常策」と「非常策」に別れる。中国がその持てる影響力をフルに行使することで、前者は北朝鮮から平和裏に拉致被害者を奪還する策であるが、後者はクーデターを使嗾して金正日体制そのものを転覆する策であり、前者が不成功に終わった場合の次策と位置づければよい。
 私の考える解決策とは、以上のようなものである。
 だが、このような山田案の有効性が簡単に理解されるとは思わない。これは小手先の思いつきではなく、未来を見据えた国家戦略をも踏まえたものだ。ただ、それを理解していただくためには、逆に従来の策や方針がなぜ間違っているのか、なぜ山田案が戦略的にも正しいのか、そしてそれらが今後の国際情勢とどう関わってくるのかといった点について、さらに詳しく論じる必要性を感じた。そのために2部を設けることにした。内容には1部の繰り返しも多々含まれるが、それは筆者の趣旨をより深く理解し、納得していただくためであると了承していただきたい。
 もし「戦略的互恵外交」が成功に導かれれば、その影響は日中関係が「ウィンウィン」として劇的に改善されるに留まらない。最終的に世界の勢力図すらも塗り替えていく可能性を秘めている。今やEUの研究機関はドルの基軸通貨体制の崩壊が近づきつつあることを警告している。つまり、大戦後の世界システムが終焉をむかえ、世界は新たに多極化の時代を迎える。それを見据えれば、「日中新時代」の始まりが単に二国間関係の改善に留まらず、別の意義も秘めていることがお分かりいただけるはずだ。
 本稿のひとつの目的は拉致問題を解決した上、この扉を開かんとすることである。

1・法理的には正しかった最高裁の棄却判決
 まず山田案の焦点である「新日中条約の締結」について、もう少し詰めて考えてみたい。北朝鮮による拉致問題の解決と交換条件として提示される戦略の“心臓部”であるだけに、理論面に欠陥があるようであってはならない。
 現在の日中関係は、ハイレベルはともかく国民レベルでは改善するのが非常に難しいというのが現状である。
 今年07年4月には、このような両国関係を象徴する出来事が起こっている。
 温家宝首相が日本を去って間がない27日、日本の最高裁は、強制労働や慰安婦の中国人被害者が日本政府・企業を相手に損害賠償を求めていた訴訟に対して、「個人の請求権は1972年の日中共同声明で放棄された」との判断を示し、原告側請求を棄却したのである。裁判長と裁判官は一致して「同声明5項はすべての請求権を放棄する旨を定めたものと解される」と結論づけたという。こうして、原告側の敗訴が確定した。
 これに対して、中国外交部の劉建超報道官はこう述べた(以下、翌日「人民網日本語版」からの引用)。
「中国政府が『中日共同声明』で日本国への戦争賠償請求放棄を宣言したのは、両国人民の友好的共存に目を向けた政治的決断だ。われわれは日本の最高裁が中国側の度重なる掛け合いを顧みず、この条項を勝手に解釈したことに対して強い反対を表明する。日本の最高裁が『中日共同声明』に下した解釈は違法であり、無効だ。われわれは日本政府に対し、中国側の懸念に真剣に対応し、適切にこの問題を処理するようすでに要求している」
 この判決に関して、純粋に法理上の問題として論じてみたい。
 1951年のサンフランシスコ平和条約では、個人の請求権も含め、日本と連合国との戦時下の出来事における相互請求権が完全に放棄されている。以下はサ条約の第十四条のb項である。
「(前略)連合国は、連合国のすべての賠償請求権、戦争の遂行中に日本国及びその国民がとつた行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する」
 つまり、連合国と日本との間で交わされた誓約によると、「連合国及びその国民」は日本に対する請求権を放棄しているのである。
 むろん、1951年当時、中華人民共和国政府は連合国に未加入の状態だった。だが、では71年10月の加入後から今日に至るまで、国連総会その他の機会において、中国がこのサンフランシスコ平和条約に異議ありと訴えたことが一度としてあっただろうか? 
 答えは「無い」。
 しかも、72年の日中共同声明を両国が作成するにあたり、当時の中国共産党政府は、このサ平和条約の戦後処理の方法や概念にとくに異を唱えなかった。
 つまり、以上の点から、中国政府が二重の意味でこのサ条約の第十四条を追認し、踏襲しているという意志表示を国際社会に対して行ったものと見なされるのである。
 よって、日中共同声明の第5項における「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」という文言が、サンフランシスコ平和条約の延長線上にあるものであり、また中国政府がそれを容認したものと解釈されるのは、外交上も国際法上も当然のことなのである。
 つまり、法理上、日本の最高裁の判決が上記のような判断を下したのは当たり前のことである。中国外交部は「日本の最高裁が日中共同声明を勝手に解釈した」と非難するが、「勝手な解釈」をしているのは中国政府のほうなのである。
 だいたい、胡錦濤国家主席・温家宝首相自身も、この日中共同声明を筆頭とする過去の日中間の合意文書について、「日本側はこれを遵守せよ」と主張しているのだから、ますますもって日本はこの法理上の原則や正当性を捻じ曲げるわけにはいかなくなる。
 むろん、この法理を踏まえたうえで、さらに人道的・道義的観点から日本政府が戦争被害者に対して別途の補償をすることが望ましいことは言うまでもないが、中国に対して厳しい現在の日本の世論を考えると、現実にそれが実行される可能性は薄い。

「日中関係を利用して日本人拉致問題を解決する方法」2007年10月作成・配布
【文書の構成】
・日本向け1部(1~10/10)
・日本向け2部(1~20/20)
・中国向け1部(1~10/10)
・中国向け2部(1~15/15)

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共謀罪(テロ等準備罪) 対象の277の罪

共謀罪(テロ等準備罪) 対象の277の罪
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